2025年2月、私は5年間育てた訪問介護事業を株式譲渡しました。3人で始めた事業所を53人規模まで育て、最終的に他社の手に渡すまで約5年間でした。この記事は、M&Aを成功させるための準備を、実体験として書いたものです。
なぜ今、介護事業のM&Aが増えているのか
訪問介護業界では、人材不足と経営者の高齢化を背景に、事業承継・M&Aが増加しています。買い手は「既存の利用者・スタッフ・指定番号をそのまま引き継ぎたい」というニーズを持っています。つまり、「運営している」こと自体に価値があります。
買い手が必ず確認する4つの軸
① 財務:P/Lの「整い方」が値段を決める
直近3期分の決算書が「説明できる数字」になっているか。売上の内訳(保険分・自費分・加算分)、人件費率、営業利益率が明確に示せるかが重要です。
② 契約:3点セットの確認
利用者との契約書・ヘルパーとの雇用契約書・事業所の賃貸借契約書。これらに「譲渡を阻む条項」が入っていないかが確認されます。特に賃貸借契約の「事前承諾なき譲渡禁止条項」は要注意です。
③ 人材:属人化リスクの解消
「特定の人が辞めたら回らない」という属人化は買い手にとって最大のリスクです。複数のサ責育成・業務マニュアルの整備・管理者の後継者育成が評価を上げます。
④ 記録:品質が値段になる
訪問記録・サービス計画書の品質が低いと、介護保険の返還リスクとみなされ、譲渡価格に直接影響します。記録の様式統一・漏れのない記載・5年間の保存体制が確認されます。
| 評価軸 | 高評価の条件 | 低評価の条件 |
|---|---|---|
| 財務 | 3期連続黒字・加算最大算定 | 単年度赤字・加算未算定 |
| 契約 | 書類が整備・譲渡阻害条項なし | 古い様式・一部未締結 |
| 人材 | 複数サ責・マニュアル整備済み | 代表一人に依存・マニュアルなし |
| 記録 | 様式統一・漏れなし・保存OK | 様式バラバラ・記載漏れあり |
開業初日から逆算して「売れる事業所」を作る
M&Aは経営の最終局面ではなく、開業初日の決断から始まっています。定款の整備・契約書の品質・記録の様式——これらを最初から正しく設計しておくことが、5年後の選択肢を作ります。
仮に売却の意思がなくても、この4軸を整えている事業所は融資が通りやすく、採用に強く、ケアマネからの信頼も高くなります。「売れる事業所の作り方」は「良い経営の作り方」と同じです。
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