訪問介護の開業資金について調べると、「500万〜1,500万円」というぼんやりした幅が出てきます。実際にいくらかかったのか、内訳はどうだったのか——この記事は、2020年4月、コロナ禍の緊急事態宣言下で訪問介護を立ち上げた私が、実際に動かした800万円の内訳と、月商37万円から1,200万円・年商1.2億円まで育てた5年間の記録を公開するものです。
800万円の出どころ
| 出どころ | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 自己資金 | 100万円 | 開業決定時点で手元にあった全額 |
| 親からの借入 | 200万円 | 頭を下げて借りた |
| 銀行融資(日本政策金融公庫) | 500万円 | 創業融資 |
| 合計 | 800万円 |
親に頭を下げてお金を借りることは、多くの起業家が嫌がります。私も嫌でした。ただ、300万円の自己資金(自分+親)を作っておくと、銀行融資の通り方がまったく違います。自己資金比率が約38%まで上がるからです。
開業初月の売上は、37万円だった
事業所が指定を受け、サービス提供を開始した最初の月。私が手にした売上は37万円でした。これは2020年4月。安倍総理(当時)が緊急事態宣言を発動した、まさにその月です。
人件費は3人分で月70万円ほど出ていきます。売上37万円、人件費70万円、経費を入れて毎月40〜50万円のキャッシュアウトが続く中で、800万円の残金が日に日に削れていきました。このペースなら、15〜18ヶ月で尽きる計算でした。
なぜ生き残れたのか ― 「鶏と卵の鶏になる」と決めた話
私はある決断をしました。自分自身が、鶏と卵の鶏になる、と。
訪問介護の立ち上げ期には「利用者が増えないとヘルパーを雇えない、ヘルパーがいないと利用者を取れない」という鶏と卵のジレンマがあります。経営者が事務所に座って待っていても、このサイクルは絶対に回り出しません。だから私は決めました。経営者である自分が、卵を産む鶏になる、と。
- ケアマネ営業を自分でやる。コロナでFAX・電話・Zoomを組み合わせて一日10件かける
- サ責の周辺業務を自分でやる
- 採用も電話応対も全部、自分で
- 現場の動きを完全に頭に入れる
月商37万円から1,200万円まで ― 売上推移
| 時期 | 月商の目安 |
|---|---|
| 開業1ヶ月目(2020年4月) | 37万円 |
| 開業6ヶ月目 | 約150万円 |
| 開業1年目末 | 約350万円 |
| 開業2年目末 | 約600万円 |
| 最盛期(2024年頃) | 1,200万円 |
| 年商ピーク | 1.2億円 |
介護報酬の入金タイミングを知らないと、3ヶ月で資金ショートする
⚠️ 訪問介護サービスを提供した月の翌月10日までに国保連へ請求し、入金はさらにその翌月末です。最初の入金まで約2ヶ月のタイムラグがあります。この間も人件費は毎月発生します。
私が800万円を集めた最大の理由は、これでした。最低3ヶ月分の人件費をキャッシュで持っていないと、開業から3ヶ月目に資金ショートすることが、事業計画書を作る段階で明らかだったからです。
もう一度やるなら、ここは削る/絶対削らない
削っていいと思った支出
- 必要以上に立派な事務所家賃(機能要件を満たせば駅近でなくてよい)
- 高額なホームページ制作費(立ち上げ期は最低限でよい)
- 新品の備品(PC・電話・什器は中古で十分)
絶対削ってはいけない支出
- 採用費(採用が止まると事業全体が止まる)
- ICT・記録ソフト(安いソフトに切り替えると移行コストがかさむ)
- 運転資金バッファ(3ヶ月分の人件費は触らず置いておく)
訪問介護の開業に必要な金額は、エリアと規模で大きく変わります。大事なのは金額そのものより、いつ何にお金が出ていき、いつ売上が入ってくるか、そのサイクルを開業前に正確に掴んでおくことです。800万円という壁は、思っているほど高くありません。代わりに、開業初日から経営者が鶏と卵の鶏になる覚悟が必要です。
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