訪問介護の指定申請は、書類さえ揃えれば通るように見えて、実際にはほぼ全員が一度はどこかで詰まります。私自身、2020年に訪問介護事業を3人で立ち上げた際、最初の申請で差し戻しを受け、開業予定日が1ヶ月後ろにずれました。その後、3人体制から53人規模まで育て、2025年に株式譲渡(M&A)で出口を作るまでに、複数の指定変更届も経験しました。
この記事では、横浜市で訪問介護(訪問介護員等派遣事業)を開業するまでの全ロードマップと、各フェーズで詰まる7つのポイントを整理します。
全体ロードマップ:4フェーズ・11ステップ・3〜4ヶ月
横浜市で合同会社を設立し、訪問介護の指定申請を完了して事業を開始するまでは、大きく4つのフェーズ・11ステップに分解できます。総期間はおおむね3〜4ヶ月です。
| フェーズ | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| フェーズ1 | 合同会社の設立準備 | 1〜2週間 |
| フェーズ2 | 登記申請・完了 | 1〜2週間 |
| フェーズ3 | 人員・設備要件の整備と指定申請 | 1〜2ヶ月(最重要) |
| フェーズ4 | 審査・指定前研修・開業 | 約1ヶ月 |
ここで最初に押さえるべきは、指定(=開業)日は毎月1日付けになるという点です。途中の日付では指定が下りません。スケジュールは必ず逆算で組んでください。
横浜市の最重要ルール「前々月末日」
横浜市の訪問介護の指定申請は、「指定を受けようとする月の前々月末日」が書類の提出期限です。
10月1日に開業したい場合 → 8月31日までに全書類が横浜市に受理されていなければなりません。
安全圏は締切の2週間前です。書類に不備があれば受理されないため、8月中旬には全書類を持っていく構えで動くべきです。このスケジュールから逆算すると、3ヶ月前から準備に動かなければ希望する月の1日付け開業は実現しません。
フェーズ1:合同会社の設立準備(1〜2週間)
商号(社名)・本店所在地・事業目的・出資金・印鑑を決めます。このフェーズで最も重要なのが定款の事業目的の文言です。
⚠️ 定款の事業目的に「介護保険法に基づく居宅サービス事業」または「介護保険法に基づく訪問介護事業」という文言がないと、指定申請が通りません。司法書士に依頼する場合も、この文言を必ず指定してください。
フェーズ2:登記申請・完了(1〜2週間)
定款・代表社員就任承諾書・出資金払込証明書などを法務局へ提出します。申請した日が会社設立日になります。登記完了後、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)と法人の印鑑証明書を取得してください。これらは指定申請の必須添付書類です。
フェーズ3:人員・設備要件の整備と指定申請(1〜2ヶ月)
ここが本丸です。7つのつまずきポイントのうち5つがこのフェーズに集中しています。整える内容は以下の通りです。
- 管理者(常勤1名)
- サービス提供責任者(常勤1名以上・資格要件あり・管理者と兼務可)
- 訪問介護員(常勤換算2.5人以上)
- 事務室・相談スペース・消毒設備の整備
- 申請書類一式の作成(運営規程・勤務形態一覧表・重要事項説明書など)
フェーズ4:審査・指定前研修・開業(約1ヶ月)
書類審査・現地確認を経て、指定が決定すると管理者は横浜市が実施する指定前研修(説明会)への出席が求められます。毎月1日付けで「指定居宅サービス事業者」として指定され、事業を開始できます。
ここで詰む7つのポイント
① 事業目的の文言不足(フェーズ1)
最も多いつまずきです。定款の事業目的に必要な文言がないと、申請書類を全部揃えても指定が通りません。横浜市の「指定申請の手引き」を登記前に必ず確認してください。
② サ責の「常勤換算」を読み違える(フェーズ3)
常勤換算2.5人は「正社員2.5人」ではなく「就業規則の所定労働時間を基準にした換算」です。週20時間勤務のパートは0.5人カウント。ここを誤ると人件費が過剰になるか、要件を満たしていない状態で申請することになります。
③ 管理者の兼務範囲を誤解する(フェーズ3)
管理者はサ責と兼務できますが、ヘルパー業務との兼務の可否は自治体ごとに解釈が異なります。横浜市では事前協議で必ず確認してください。
④ 事務室・相談室の独立性が満たせていない(フェーズ3)
住居併用物件の場合、独立性の判断が厳格です。物件契約前に図面を持って横浜市に事前相談することを強く推奨します。契約後に「ここでは申請が通りません」と言われると敷礼金が無駄になります。
⑤ 建築基準法・消防法の確認漏れ(フェーズ3)
物件が事業用として使えるか、消防設備点検が必要かを契約前に確認してください。見落とすと指定申請の段階でゼロからやり直しになります。
⑥ 運営規程と勤務形態一覧表の数字がズレる(フェーズ3)
この数字のズレが最頻出の差し戻し理由です。運営規程を先に固め、それに合わせて勤務形態一覧表を作る順番が正解です。逆の順番でやると必ずズレが発生します。
⑦ 「前々月末日」ルールを逆算しきれていない(フェーズ4)
書類が9月3日に完成した場合、10月1日開業は不可能で最短でも11月1日開業になります。この1ヶ月のズレで人件費・家賃が100万円単位で余分にかかります。
私がやってよかった3つの事前準備
- 横浜市の「指定申請の手引き」を登記前に読み込む ― 横浜市健康福祉局介護保険課のHPからダウンロードできます。事業目的の文言要件・物件要件・人員要件が全部書いてあります。
- 物件契約前に図面を持って事前相談に行く ― 「この物件で事務室・相談室の独立性は満たせますか」と直接聞いてOKをもらってから契約する。これだけで敷礼金を失うリスクがゼロになります。
- 申請書類は締切の2週間前に「ほぼ完成」させる ― 残りの2週間は横浜市との事前確認と書類の最終チェックに使う。締切ぎりぎりに提出して受理されなかったケースを私は何度も見てきました。
横浜市での訪問介護の指定申請は、7つのポイントを事前に潰し、逆算スケジュールで動けば必ず通ります。申請に強い人間を一人つけるだけで、開業日が3ヶ月単位で変わることも珍しくありません。
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